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おしっこが途中で止まる原因と病気は?放置しないで!受診すべき症状と何科?

「おしっこが途中で止まる」「尿のキレが悪い」といった症状は、多くの方が経験しうる排尿の悩みの一つです。
これは単なる加齢のせいだろうと軽く考えがちですが、実は様々な病気が原因となっている可能性があります。
もし、ご自身の排尿に以前とは違う変化を感じているなら、それは体のサインかもしれません。
この記事では、「おしっこが途中で止まる」という症状(尿線途絶)について、どのような状態を指すのか、考えられる原因となる病気、そしていつ、何科を受診すべきか、さらには自分でできる対処法や放置するリスクについて詳しく解説します。
ご自身の症状と照らし合わせながら読み進めていただき、適切な対応を考える一助となれば幸いです。

目次

おしっこが途中で止まる症状とは?(尿線途絶)

「おしっこが途中で止まる」という症状は、医学的には「尿線途絶(にょうせん・とぜつ)」と呼ばれる排尿障害の一種です。
これは、尿がスムーズに、途切れることなく流れ出ない状態を指します。

尿線途絶とは

尿線途絶は、膀胱に溜まった尿を体外へ排出する過程で、尿の流れが一時的または断続的に中断される状態です。
健康な状態であれば、一度排尿を開始すると、尿は勢いよく、一定の流れで継続的に排出されます。
しかし、尿線途絶がある場合、その一連の流れが妨げられます。

どのような状態を指すのか

尿線途絶には、いくつかの具体的な状態が含まれます。
ご自身の症状がこれらに当てはまるか確認してみてください。

  • 尿の勢いが弱い(尿勢低下): 以前に比べて尿の出る勢いが弱くなった、チョロチョロとしか出ない、尿が遠くまで飛ばない。
  • 排尿の途中で尿の流れが途切れる: 一度出始めても、途中で何度か止まってしまい、また出始めるということを繰り返す。最後まで出し切るのに時間がかかる。
  • 最後まで出し切れない感じがする(残尿感): 排尿が終わったつもりでも、膀胱にまだ尿が残っているような感じがする。トイレを出た後すぐにまた尿意をもよおすことがある。
  • 排尿開始までに時間がかかる(尿意切迫感とは異なる): 尿意はあるのに、すぐに排尿が開始できず、しばらく待たなければならない。
  • 力まないと尿が出にくい: お腹に力を入れたり、いきんだりしないと尿が出にくい、あるいは途中で止まった尿を出すために力む必要がある。
  • 尿が滴り落ちる(終末時滴下): 排尿の最後に、尿が勢いよく出るのではなく、ポタポタと少量ずつ漏れ出てしまう。

これらの症状は単独で現れることもありますが、複数組み合わさって現れることも少なくありません。
これらの症状は、膀胱から尿道、そして尿が体外に出るまでの通り道(尿路)に何らかの問題が起きているサインと考えられます。

おしっこが途中で止まる原因と病気

おしっこが途中で止まる(尿線途絶)という症状は、様々な原因によって引き起こされます。
男性と女性では解剖学的な構造が異なるため、原因となる病気にも違いが見られます。
また、男女共通の原因や、年齢によって起こりやすい原因もあります。
ここでは、それぞれの原因と関連する病気について詳しく見ていきましょう。

男性に多い原因

男性の尿線途絶の原因として最も一般的なのは、前立腺に関する病気です。

前立腺肥大症

前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の真下に位置し、尿道を取り囲むように存在します。
加齢とともに前立腺が大きくなることがあり、これを前立腺肥大症といいます。
肥大した前立腺が尿道を圧迫することで、尿の通り道が狭くなり、尿の勢いが弱くなったり、途中で止まったりする症状を引き起こします。

  • 症状: 尿線途絶の他に、頻尿(昼間や夜間に何度もトイレに行く)、夜間頻尿(夜中に何度も起きてトイレに行く)、残尿感(排尿後も尿が残っている感じ)、尿意切迫感(突然我慢できないほどの強い尿意をもよおす)、排尿開始遅延(尿が出始めるまでに時間がかかる)など、様々な症状が現れます。
    これらの症状はまとめて「下部尿路症状(LUTS)」と呼ばれます。
  • 原因: 主に加齢に伴う男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの変化などが関係していると考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。
  • 診断: 問診、尿検査、血液検査(PSA検査)、尿流量測定、残尿測定、超音波検査などが行われます。
  • 治療: 症状が軽度であれば、生活習慣の改善や薬物療法(前立腺を収縮させる薬、尿道を広げる薬など)が中心となります。症状が重度の場合や薬物療法で効果が見られない場合は、手術(内視鏡手術が一般的)が検討されます。

その他(前立腺炎など)

前立腺肥大症以外にも、前立腺の病気が尿線途絶の原因となることがあります。

  • 前立腺炎: 前立腺が炎症を起こす病気で、細菌感染による急性前立腺炎と、原因がはっきりしない慢性前立腺炎があります。
    前立腺の腫れや痛みに加え、頻尿、残尿感、排尿痛、尿線途絶などの症状が現れることがあります。
    特に急性前立腺炎では、炎症による腫れが尿道を圧迫し、尿が出にくくなることがあります。
  • 前立腺がん: 前立腺がんは早期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると前立腺肥大症と似た排尿症状(尿線途絶、頻尿など)が現れることがあります。
    PSA検査などによる早期発見が重要です。

女性に多い原因

女性の尿線途絶は男性に比べると少ないですが、いくつかの原因が考えられます。

過活動膀胱

過活動膀胱は、脳から膀胱への指令系統に異常が生じたり、膀胱の筋肉が過敏になったりすることで、膀胱に十分な尿が溜まっていないのに突然強い尿意を感じる病気です。
尿線途絶そのものが主な症状ではありませんが、強い尿意に慌ててしまい、リラックスして排尿できず、腹圧をかけて排尿しようとすることで尿線が途切れたり、排尿困難を感じたりすることがあります。

  • 症状: 尿意切迫感(突然我慢できないほどの強い尿意)、頻尿(1日に8回以上トイレに行く)、切迫性尿失禁(我慢できずに尿が漏れてしまう)が主な症状ですが、排尿困難感を伴うこともあります。
  • 原因: 特定の原因がない特発性の場合と、神経系の病気や骨盤臓器脱などが原因となる場合があります。
  • 診断: 問診、尿検査、排尿日誌、パッドテストなどが行われます。
  • 治療: 生活習慣の改善(水分摂取量の調整、カフェイン制限など)、膀胱訓練、骨盤底筋トレーニング、薬物療法などが中心となります。

骨盤臓器脱

骨盤臓器脱は、出産や加齢などによって骨盤底筋群が弱くなり、子宮、膀胱、直腸などが本来の位置から下がってきて、膣の外に出てきてしまう病気です。
下がってきた膀胱や尿道が圧迫されたり、ねじれたりすることで、尿の通りが悪くなり、尿線途絶や排尿困難を引き起こすことがあります。
排尿時に、下がった臓器を手で押し戻すと尿が出やすくなる、という方もいらっしゃいます。

  • 症状: 膣から何かが出ている感じ、股間にものが挟まっている感じ、下腹部の違和感、腰痛、頻尿、残尿感、排尿困難、便秘など。
  • 原因: 出産、加齢、閉経、肥満、慢性的な咳、便秘など、骨盤底筋に負担がかかることが原因となります。
  • 診断: 問診、内診などが行われます。
  • 治療: 軽度の場合は骨盤底筋トレーニングやペッサリー(リング状の装具を膣に入れて臓器を支える)を使用します。症状が重度の場合やペッサリーが合わない場合は、手術が検討されます。

その他

女性の場合、尿道カルンクル(尿道の出口付近にできる良性の小さな腫瘍)や、尿道憩室(尿道の一部が袋状に膨らんで、そこに尿が溜まる)なども、比較的稀ですが尿線途絶の原因となることがあります。

男女共通の原因

男性と女性に共通して、尿線途絶を引き起こす可能性のある原因や病気もあります。

神経系の病気(神経因性膀胱など)

脳や脊髄から膀胱や尿道への神経の伝達に障害が起きることで、膀胱の収縮や尿道の括約筋の弛緩がうまくいかなくなる状態を神経因性膀胱といいます。
様々な神経系の病気が神経因性膀胱の原因となり、尿線途絶を含む様々な排尿障害を引き起こします。

  • 原因となる病気:
    脳卒中
    パーキンソン病
    脊髄損傷
    多発性硬化症
    糖尿病性神経障害
    腰部脊柱管狭窄症など

これらの病気によって、膀胱が十分に収縮しなくなったり、尿道括約筋が適切に弛緩しなくなったりすることで、排尿がスムーズに行えなくなり、尿線途絶が生じます。

泌尿器の炎症・結石

尿路の炎症や結石も、尿線途絶の原因となり得ます。

  • 膀胱炎・尿道炎: 膀胱や尿道が細菌などに感染して炎症を起こす病気です。
    炎症による腫れや刺激が尿の通り道を狭くしたり、排尿時に痛みや不快感を伴うことでスムーズな排尿を妨げ、尿線途絶や排尿困難を引き起こすことがあります。
    特に女性に多い病気ですが、男性でも起こります。
  • 尿管結石・膀胱結石: 腎臓で作られた結石が尿管や膀胱に移動し、尿の通り道を物理的に塞いだり刺激したりすることで、尿の流れが悪くなり、尿線途絶や排尿痛、血尿などを引き起こすことがあります。
    結石の場所や大きさによって症状は異なります。

心理的な要因

ストレスや緊張、不安なども、一時的に尿線途絶や排尿困難を引き起こすことがあります。
例えば、人前で排尿しようとするとうまくいかない(パーソネリア、舞台恐怖症の一種)、急いでいる時に焦ってしまい排尿が途切れる、といったケースです。
精神的な緊張によって、尿道括約筋が過度に収縮してしまい、排尿を妨げることがあります。
これは病気というよりは機能性の問題ですが、症状が継続する場合は医師に相談することが推奨されます。

年齢による違い

尿線途絶の原因は、年齢によって傾向が異なります。

  • 子供: 先天的な尿路の異常(例: 後部尿道弁など)や、機能性の排尿障害(例: 排尿筋と括約筋の協調運動障害など)が原因となることがあります。
    夜尿症や日中の失禁などを伴うこともあります。
  • 若年成人: 男性では前立腺炎や尿道炎、女性では膀胱炎や尿道炎、また男女ともに心理的な要因や、比較的稀ですが尿路結石などが考えられます。
  • 中高年: 男性では前立腺肥大症が最も一般的な原因となります。
    女性では閉経後のホルモンバランスの変化や出産歴なども影響し、過活動膀胱や骨盤臓器脱が増加します。
    男女ともに神経系の病気(糖尿病など)や、泌尿器系の悪性腫瘍なども考慮する必要があります。

年齢層別に原因を理解することは、自身の症状の原因を推測し、適切な医療機関を受診する上で役立ちます。

尿線途絶の主な原因・病気まとめ

分類 主な原因・病気 特徴的な症状(尿線途絶以外) 備考(年齢・性別など)
男性に多い 前立腺肥大症 頻尿、夜間頻尿、残尿感、尿意切迫感 中高年男性に多い
前立腺炎 排尿痛、残尿感、下腹部・会陰部の痛み 若年~中高年男性に多い
女性に多い 過活動膀胱 尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁 全年齢層、特に中高年女性
骨盤臓器脱 膣からの突出感、残尿感、腰痛 出産経験のある中高年女性
男女共通 神経系の病気 原因疾患による他の神経症状 原因疾患による
尿路の炎症・結石 排尿痛、血尿、脇腹・下腹部の痛み 全年齢層
心理的な要因 緊張する場面で起こりやすい 一時的なことが多い

おしっこが途中で止まる場合、いつ病院に行くべきか?

「おしっこが途中で止まる」という症状は、軽度であれば一時的なものかもしれません。
しかし、多くの場合、何らかの体のサインである可能性が高いため、放置せずに医療機関を受診することが重要です。
では、どのような場合に受診すべきなのでしょうか。

受診が必要な症状

以下の症状が見られる場合は、早めに医療機関(特に泌尿器科)を受診することを強く推奨します。

  • 症状が継続している: 尿線途絶の症状が数日以上続いている、あるいは繰り返し起こる場合。
  • 症状が悪化している: 尿の勢いがさらに弱くなった、途中で止まる回数が増えた、排尿に要する時間が長くなったなど、症状が進行している場合。
  • 日常生活に支障が出ている: 頻繁にトイレに行きたくなる、夜中に何度も目が覚める、残尿感で不快感があるなど、排尿の悩みによって生活の質が低下している場合。
  • 他の排尿症状を伴う: 頻尿、夜間頻尿、残尿感、排尿時の痛みや灼熱感、強い尿意切迫感などを伴う場合。
  • 自分でできる対処法を試しても改善しない: 水分摂取量の調整など、一般的な対策を試しても症状が改善しない場合。
  • 不安が大きい: ご自身の症状に対して強い不安を感じている場合。

これらの症状は、前立腺肥大症や過活動膀胱、泌尿器の炎症など、治療が必要な病気が隠れている可能性を示唆しています。
早期に診断を受け、適切な治療を開始することで、症状の改善や病気の進行を抑えることができます。

緊急性の高い症状

以下の症状が「おしっこが途中で止まる」という症状に加えて現れた場合は、緊急性が高い可能性があります。
これらの症状が見られる場合は、夜間や休日であっても救急外線を受診するか、すぐに医療機関に連絡して指示を仰いでください。

  • 全く尿が出なくなった(尿閉): 尿意はあるのに、全く尿が出せない状態。
    膀胱に尿が溜まりすぎて、下腹部に強い痛みや不快感を伴います。
    腎臓に負担がかかるため、迅速な対応が必要です。
  • 強い腹痛や腰痛を伴う: 特に突然の強い痛みで、冷や汗をかくような場合。
    尿路結石や急性前立腺炎などが疑われます。
  • 高熱を伴う: 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)が重症化している可能性があり、腎盂腎炎は迅速な治療が必要です。
  • 血尿が見られる: 尿が赤色やピンク色をしている場合。
    炎症、結石、腫瘍など、様々な原因が考えられます。
  • 意識障害や足の麻痺などの神経症状がある: 神経系の病気が原因で排尿障害が起きている可能性があり、原因疾患の治療が必要です。

これらの緊急性の高い症状は、生命に関わるような病気が原因である可能性もあります。
迷わずにすぐに医療機関を受診してください。

受診タイミングの目安

タイミング 該当する症状 考慮される原因
早めに ・症状が数日以上続く/繰り返し起こる
・症状が悪化している
・日常生活に支障
・他の排尿症状を伴う
・不安が大きい
前立腺肥大症、過活動膀胱、軽い炎症など
すぐに ・全く尿が出ない(尿閉)
・強い腹痛/腰痛
・高熱
・血尿
・意識障害/神経症状
尿閉、尿路結石、重症感染症、神経系の病気、悪性腫瘍

何科を受診すれば良い?

尿のトラブルに関する症状がある場合、どの診療科を受診すれば良いか迷う方もいらっしゃるかもしれません。
「おしっこが途中で止まる」という症状は、専門的な知識と適切な検査が必要となるため、まずは専門医を受診することが最もスムーズです。

まずは泌尿器科へ

尿の生成、排泄に関わる臓器(腎臓、尿管、膀胱、尿道、そして男性の場合は前立腺や精巣など)の病気を専門に診ているのは泌尿器科です。
「おしっこが途中で止まる」という症状は、これらの臓器の機能障害や構造的な問題が原因である可能性が高いため、まずは泌尿器科を受診するのが最も適切です。

泌尿器科では、以下のような検査や診断が行われます。

  • 問診: 症状がいつから始まったか、どのような状況で起こるか、他の排尿症状の有無、既往歴、服用している薬などについて詳しく聞かれます。
  • 尿検査: 尿中の白血球、赤血球、細菌などを調べ、炎症や感染症の有無を確認します。
  • 血液検査: PSA(前立腺特異抗原)の値を調べ、前立腺がんの可能性を評価したり、腎機能などを調べたりします。
  • 尿流量測定(ウロフロメトリー): 排尿時の尿の勢いや量、時間を測定する検査です。
    便器のような機器に向かって排尿するだけで簡単に計測できます。
    尿の勢いの低下や途絶を客観的に評価できます。
  • 残尿測定: 排尿後、膀胱にどれくらい尿が残っているかを測定する検査です。
    超音波機器を下腹部にあてるだけで簡単に測定できます。
    残尿が多い場合は、膀胱の収縮力が低下しているか、尿の通り道が狭くなっていることが考えられます。
  • 超音波検査: 腎臓、膀胱、前立腺(男性)、子宮(女性)などを観察し、結石や腫瘍、臓器の大きさなどを確認します。
  • 膀胱鏡検査: 尿道から細い内視鏡を入れて、尿道や膀胱の内部を直接観察する検査です。
    狭窄や腫瘍、結石などを発見するのに役立ちます。
  • 尿路造影検査: 造影剤を使って腎臓、尿管、膀胱、尿道などをX線撮影し、尿路の形や通過障害の有無を調べます。
  • ウロダイナミクス検査(膀胱機能検査): 膀胱に生理食塩水を注入しながら、膀胱の容量、圧、排尿筋の働き、尿道括約筋の状態などを詳しく調べる検査です。
    神経因性膀胱など、複雑な排尿障害の原因を特定するのに役立ちます。

これらの検査を組み合わせて行うことで、尿線途絶の原因を特定し、適切な診断と治療方針を立てることができます。

他の診療科との連携

尿線途絶の原因が泌尿器科疾患以外にあると疑われる場合は、他の診療科との連携が必要になることもあります。

  • 神経内科: 脳卒中やパーキンソン病、多発性硬化症など、神経系の病気が原因で神経因性膀胱が疑われる場合。
  • 婦人科: 骨盤臓器脱や子宮の病気などが原因で女性の排尿困難が起きている場合。
  • 内分泌内科: 糖尿病による神経障害が原因で神経因性膀胱が疑われる場合。
  • 心療内科・精神科: 心理的な要因が強く関与していると考えられる場合。

しかし、まずは「おしっこが途中で止まる」という症状を専門的に診る泌尿器科を受診し、そこで原因が特定できない場合や、他の診療科の病気が強く疑われる場合に、適切な診療科へ紹介されるのが一般的な流れです。

自分でできる対処法や改善策は?

おしっこが途中で止まる症状に対して、自分でできる対処法や、症状の改善・悪化予防に繋がる可能性のある生活習慣の見直しがいくつかあります。
ただし、これらの対策はあくまで症状の緩和や原因疾患の管理をサポートするものであり、根本的な治療には専門医による診断と治療が必要であることを理解しておくことが重要です。

生活習慣の見直し

日々の生活習慣を見直すことは、排尿機能の改善に繋がる可能性があります。

  • 適切な水分摂取: 水分を摂りすぎると尿量が増えて膀胱への負担が増えますが、逆に水分不足になると尿が濃縮されて膀胱を刺激したり、便秘の原因になったりします。
    1日に1.5~2リットルを目安に、喉の渇きに応じてこまめに水分を摂るようにしましょう。
    ただし、夜間の頻尿に悩む場合は、寝る前の水分摂取を控えるなどの調整が必要です。
  • カフェインやアルコールの制限: カフェインやアルコールには利尿作用や膀胱を刺激する作用があります。
    これらを摂りすぎると、尿意が頻繁になったり、尿意切迫感が増したりすることがあります。
    摂取量を控えることで、排尿症状が改善されることがあります。
  • 冷え対策: 下半身の冷えは、膀胱の筋肉を収縮させ、排尿を妨げることがあります。
    体を冷やさないように、特に冬場は暖かい服装を心がけたり、足湯などを利用したりするのも良いでしょう。
  • 便秘の解消: 腸に便が溜まっていると、膀胱や尿道を圧迫し、排尿を妨げることがあります。
    バランスの取れた食事、十分な水分摂取、適度な運動などで便秘を予防・解消しましょう。
  • 適度な運動: 全身の血行を良くし、自律神経のバランスを整えることは、排尿機能にも良い影響を与えます。
    また、適度な運動はストレス解消にも繋がり、心理的な要因による排尿困難の緩和にも役立ちます。
  • ストレス管理: ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、排尿機能に悪影響を与えることがあります。
    趣味や休息などでストレスを上手に解消しましょう。
  • 正しい排尿姿勢: 特に男性の場合、立ったままよりも座って排尿する方が、膀胱や骨盤底筋がリラックスしやすく、尿を出し切りやすいことがあります。
    女性の場合は、前かがみになって少し足を開いて座ると、骨盤底筋が弛緩しやすくなると言われています。

これらの生活習慣の見直しは、尿線途絶の原因となる病気の種類に関わらず、多くの排尿トラブルに対して有効な場合があります。

骨盤底筋トレーニング(女性向け)

骨盤底筋群は、膀胱や子宮などの臓器を支え、尿道や肛門を締め付ける働きをする筋肉の集まりです。
この筋肉が衰えると、臓器が下垂したり(骨盤臓器脱)、尿道括約筋の機能が低下したりして、排尿困難や尿失禁の原因となります。
特に女性は、妊娠・出産や加齢、閉経によって骨盤底筋が弱くなりやすい傾向があります。

骨盤底筋トレーニングは、この筋肉を鍛えることで、排尿のコントロールを改善したり、骨盤臓器脱の予防・改善に繋がったりする可能性があります。

簡単な骨盤底筋トレーニングの例:

  • 仰向けに寝て、膝を立てます。
  • 息を吐きながら、尿道、膣、肛門を同時にキューっと締め上げるように意識します。尿意を我慢するような感覚です。
  • 締め上げた状態を5秒キープします。この時、お腹やお尻、太ももの力は抜くように意識しましょう。
  • ゆっくりと力を緩めます。
  • これを10回繰り返します。
  • 慣れてきたら、座っている時や立っている時など、いつでも行えるようになります。

このトレーニングを毎日続けることで、徐々に骨盤底筋が強化され、排尿機能の改善に繋がる可能性があります。
ただし、正しい方法で行うことが重要です。
不安な場合は、医師や理学療法士に指導を仰ぎましょう。
男性も、前立腺術後など、一部のケースで骨盤底筋トレーニングが有効な場合があります。

これらのセルフケアはあくまで補助的なものです。
症状が続く場合や悪化する場合は、必ず医療機関を受診して原因を特定し、適切な治療を受けてください。

おしっこが途中で止まる状態を放置するリスク

「おしっこが途中で止まる」という症状は、たとえ軽度であっても、体のサインである可能性が高いです。
この症状を放置してしまうと、原因となっている病気が進行するだけでなく、様々な合併症を引き起こすリスクが高まります。

尿閉のリスク

尿線途絶は、尿の通り道が狭くなったり、膀胱の収縮力が弱まったりすることで起こります。
症状が進行すると、最終的に全く尿が出せなくなる「尿閉(にょうへい)」という状態に至る可能性があります。

尿閉になると、膀胱に大量の尿が溜まり、下腹部に激しい痛みや不快感を伴います。
尿がスムーズに排出されない状態が続くと、尿が腎臓へ逆流し、腎臓に負担がかかります。
ひどい場合は、腎機能障害を引き起こす可能性もあります。
尿閉は緊急性が高く、カテーテルを使って膀胱に溜まった尿を排出する処置が必要となります。

感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)のリスク

排尿後に膀胱に尿が残ってしまう状態(残尿)が続くと、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなります。
これにより、膀胱炎を繰り返しやすくなったり、膀胱炎が悪化したりするリスクが高まります。

さらに、膀胱で増殖した細菌が尿管を逆行して腎臓に達すると、「腎盂腎炎(じんうじんえん)」を引き起こす可能性があります。
腎盂腎炎は、発熱、腰痛、悪寒などを伴う重篤な感染症であり、迅速な抗生物質治療が必要です。
放置すると、腎機能の低下や、場合によっては敗血症などの重篤な状態に繋がる恐れもあります。

その他の合併症

尿線途絶の原因となっている病気や、それに伴う排尿障害を放置することで、以下のような様々な合併症が発生するリスクも高まります。

  • 膀胱結石・尿路結石: 残尿があると、尿中の成分が結晶化しやすくなり、膀胱内に結石ができやすくなります。
    また、原因となっている疾患(例: 前立腺肥大症)自体が結石の原因となることもあります。
  • 水腎症: 尿の通り道が塞がれることで、腎臓で作られた尿がスムーズに流れず、腎盂や腎杯が拡張する状態です。
    長期化すると腎機能が低下する可能性があります。
  • 腎機能障害: 尿閉や水腎症が続くと、腎臓に慢性的な負担がかかり、腎機能が低下する可能性があります。
    最悪の場合、透析が必要となることもあります。
  • 尿失禁: 尿線途絶とは逆に思えるかもしれませんが、重度の前立腺肥大症などで尿道が完全に塞がりかけている場合、膀胱に溜まりきらなくなった尿が少しずつ漏れ出てしまう「溢流性尿失禁(いつりゅうせい・にょうしっきん)」を起こすことがあります。
  • QOL(生活の質)の低下: 頻尿や夜間頻尿、残尿感などの不快な症状が続くことで、睡眠不足になったり、外出を控えたりするなど、日常生活や精神的な健康に大きな影響を与えます。

このように、「おしっこが途中で止まる」という症状は、単なる不快な症状にとどまらず、様々な深刻な病気や合併症に繋がる可能性があります。
早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが、これらのリスクを回避し、健康な排尿機能を取り戻すために非常に重要です。
自己判断で放置せず、気になる症状がある場合は必ず専門医に相談しましょう。

まとめ|気になる症状は専門医に相談しましょう

「おしっこが途中で止まる」「尿のキレが悪い」「勢いがなくなった」といった排尿に関する症状は、多くの人が経験しうる悩みですが、決して軽視すべきではありません。
これらの症状は、「尿線途絶」と呼ばれ、男性では前立腺肥大症や前立腺炎、女性では過活動膀胱や骨盤臓器脱、男女共通では神経系の病気や尿路の炎症・結石など、様々な病気が原因となっている可能性があります。

たとえ症状が軽度であっても、放置することで尿閉や尿路感染症、さらには腎機能障害など、より深刻な状態や合併症に繋がるリスクが高まります。

ご自身の排尿に異変を感じたら、まずは泌尿器科を受診しましょう。
泌尿器科医は排尿の専門家であり、問診や簡単な検査によって、症状の原因を特定し、適切な診断と治療を提案してくれます。

自分でできる生活習慣の改善や、女性であれば骨盤底筋トレーニングなども、症状の緩和や予防に役立つことがありますが、これらはあくまで補助的な対策です。
根本的な原因を治療するためには、専門医の診察が不可欠です。

排尿の悩みはデリケートな問題で、受診をためらう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、早期に相談することで、原因を特定し、適切な治療を開始すれば、症状を改善し、将来的なリスクを減らすことが可能です。

もし、この記事を読んでご自身の症状が気になった場合は、一人で悩まずに、ぜひお近くの泌尿器科を受診してください。
専門家のサポートを受けることが、健康な排尿機能を取り戻し、安心した日常生活を送るための第一歩となります。


【免責事項】

この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に関するアドバイスではありません。
個々の症状や病状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けてください。
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