射精時の痛みは、男性にとって非常にデリケートで悩ましい症状です。
誰にも相談できず、一人で不安を抱えている方も少なくないでしょう。
しかし、射精痛には様々な原因があり、中には治療が必要な病気が隠れていることもあります。
この記事では、射精時の痛みがなぜ起こるのか、考えられる原因となる病気や、具体的な症状、そして医療機関を受診すべき目安や何科に行けば良いのか、ご自身でできる対処法まで詳しく解説します。
射精痛に悩むあなたが、原因を理解し、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。
射精時の痛みの主な原因とは
射精時に痛みを伴う場合、その原因は一つだけとは限りません。
男性生殖器や尿路系の様々な疾患が関連している可能性があります。
ここでは、特に可能性の高い原因について詳しく見ていきましょう。
前立腺炎が射精痛の原因となる場合
前立腺は膀胱のすぐ下にあり、精液の一部を作る男性特有の臓器です。
この前立腺に炎症が起こるのが前立腺炎で、射精痛の最も一般的な原因の一つと考えられています。
前立腺炎は急性と慢性の二つのタイプに分けられます。
前立腺の診断や治療については、前立腺炎診療ガイドラインに詳しい情報がまとめられています。
急性前立腺炎による射精時の痛み
急性前立腺炎は、細菌感染によって前立腺に急性の炎症が起こる病気です。
突然、強い症状が現れるのが特徴です。
射精時の痛みに加えて、以下のような症状を伴うことが多いです。
- 高熱(38℃以上)
- 悪寒、関節痛などの全身症状
- 排尿時の強い痛み(排尿痛)
- 頻尿、尿意切迫感
- 尿が出にくい、残尿感
- 下腹部や会陰部(肛門と陰嚢の間)の痛みや不快感
急性前立腺炎による射精痛は、前立腺や精嚢の収縮によって炎症部位が刺激されることで起こると考えられています。
適切な抗菌薬による治療が必要不可欠です。
放置すると、敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、これらの症状がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
慢性前立腺炎による射精時の痛み
慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が長期間(通常3ヶ月以上)続いている状態を指します。
急性前立腺炎のように急激で強い症状ではなく、症状が軽快したり悪化したりを繰り返しながら持続するのが特徴です。
射精時の痛みや射精後の不快感は、慢性前立腺炎でもよく見られる症状の一つです。
慢性前立腺炎の原因は、細菌感染によるもの(細菌性慢性前立腺炎)と、感染を伴わないもの(非細菌性慢性前立腺炎、慢性骨盤疼痛症候群とも呼ばれる)に分けられます。
非細菌性の場合は、ストレス、生活習慣、骨盤底筋の緊張などが関与していると考えられています。
慢性前立腺炎の症状は多岐にわたり、射精痛以外にも以下のようなものがあります。
- 会陰部や下腹部、陰茎、睾丸、腰などの痛みや不快感
- 排尿痛、頻尿、残尿感
- 勃起不全(ED)や性欲低下
- 疲労感、神経過敏
慢性前立腺炎による射精痛は、前立腺や周囲組織の慢性的な炎症や、非細菌性の場合は骨盤底筋の過緊張が関連していると考えられます。
診断には、症状の問診、直腸診による前立腺の触診、尿検査、前立腺液の検査などが行われます。
治療は原因によって異なり、細菌性の場合は抗菌薬、非細菌性の場合はα1ブロッカー、鎮痛剤、筋弛緩剤、生活指導、ストレス管理などが行われます。
根治が難しい場合もありますが、症状を緩和させるための治療法はあります。
尿道炎による射精時の痛み
尿道炎は、尿道に炎症が起こる病気です。
多くの場合、性感染症によって引き起こされます。
尿道炎が原因で射精時に痛みを感じることもあります。
これは、射精の際に精液が炎症を起こしている尿道を通ることで刺激されるために起こると考えられます。
尿道炎の主な症状は以下の通りです。
- 排尿時の痛みや熱感(排尿痛)
- 尿道のかゆみ、不快感
- 尿道からの分泌物(膿や粘液)
- 頻尿
尿道炎を引き起こす代表的な病原体としては、クラミジア・トラコマチスや淋菌が挙げられます。
これらの病原体は性行為によって感染します。
放置すると、精巣上体炎や前立腺炎、男性不妊などの合併症を引き起こす可能性があります。
性行為の経験があり、これらの症状に心当たりがある場合は、性感染症の検査を含めて泌尿器科や性病科を受診することが重要です。
精巣上体炎による射精時の痛み
精巣上体は、精巣の裏側にある器官で、精子を成熟・貯蔵する役割があります。
この精巣上体に炎症が起こるのが精巣上体炎です。
精巣上体炎も細菌感染(性感染症を含む)が原因となることが多いですが、ウイルスの感染や物理的な刺激によっても起こることがあります。
精巣上体炎の主な症状は以下の通りです。
- 精巣(睾丸)の腫れと強い痛み
- 陰嚢の赤みや熱感
- 発熱
- 下腹部や鼠径部(足の付け根)への放散痛
- 射精時の痛み
精巣上体炎による射精痛は、炎症を起こした精巣上体や精管が射精時の収縮によって刺激されることで生じます。
精巣上体炎も早期に適切な抗菌薬治療を行うことが重要ですし、生殖器感染症診療マニュアルなども参考にされます。
放置すると、膿瘍を形成したり、慢性化して痛みが続いたり、精子の通過障害を起こして不妊の原因となったりする可能性もあります。
精巣の痛みや腫れを伴う場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
性感染症(STI)が射精痛の原因となるケース
前述した尿道炎や精巣上体炎、前立腺炎の原因として、性感染症(STI:Sexually Transmitted Infections)が挙げられます。
射精痛だけでなく、様々な泌尿器科系の症状を引き起こすSTIは多岐にわたります。
性感染症対策の基本指針などでも、その重要性が指摘されています。
世界的な性感染症の状況については、グローバルSTIサーベイランス報告書などで確認できます。
射精痛と関連する可能性のある主なSTIは以下の通りです。
- 淋病: 淋菌による感染。尿道炎、精巣上体炎、前立腺炎を引き起こし、強い排尿痛や膿性の分泌物、射精痛などを伴うことがあります。
- クラミジア感染症: クラミジア・トラコマチスによる感染。淋病よりも症状が軽いことが多いですが、尿道炎、精巣上体炎、前立腺炎を引き起こし、排尿痛、かゆみ、サラサラした分泌物、射精痛などを伴うことがあります。無症状の場合も多いですが、放置すると合併症のリスクが高まります。
- マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症: 近年注目されているSTI。尿道炎や前立腺炎の原因となり、排尿痛や射精痛などを引き起こすことがあります。クラミジアと同様に無症状のことも多いです。
- トリコモナス症: トリコモナス原虫による感染。男性では無症状のことが多いですが、まれに尿道炎や前立腺炎の原因となり、排尿痛や射精痛を伴うことがあります。
これらのSTIは、適切な抗菌薬による治療で治癒することが可能です。
しかし、パートナーも同時に治療しないと再感染を繰り返したり、パートナーに感染を広げたりするリスクがあります。
性交渉の経験があり、射精痛を含め泌尿器科系の症状がある場合は、性感染症の検査を受けることを強くお勧めします。
尿路結石による射精時の痛み
尿路結石は、尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道にできる結石です。
結石が動くと、激しい痛み(疝痛発作)や血尿を引き起こすことで知られています。
通常、尿路結石が直接射精痛の原因となることは稀ですが、結石が膀胱や尿道近くにある場合、射精時の体の動きや振動によって刺激され、痛みが誘発される可能性はゼロではありません。
また、結石による炎症が周囲組織に影響を与えている場合も考えられます。
尿路結石の典型的な症状は以下の通りです。
- 突然、脇腹や下腹部に起こる非常に強い痛み(疝痛)
- 痛みが波及すること(背中、下腹部、太ももなど)
- 血尿
- 吐き気、嘔吐
- 頻尿、残尿感
射精痛が主症状ではなく、上記のような典型的な症状を伴う場合に尿路結石を疑います。
診断は尿検査、画像検査(X線、CT、超音波など)で行われます。
治療は、結石の大きさや位置によって、自然排出を待つ、鎮痛剤を使用する、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡手術などが行われます。
その他の射精時・射精後の痛みの原因
上記以外にも、射精時や射精後に痛みを引き起こす可能性のある原因がいくつかあります。
- 骨盤底筋の過緊張: 骨盤底筋は、排尿や射精などに関わる筋肉群です。ストレスや不安、長時間のデスクワークなどによって骨盤底筋が慢性的に緊張すると、会陰部や骨盤部に痛みを生じることがあります。これが射精時の痛みに繋がることもあります。慢性前立腺炎(非細菌性)の一因とも考えられています。
- 神経痛: 腰椎の疾患(椎間板ヘルニアなど)によって骨盤周囲の神経が圧迫されたり炎症を起こしたりすることで、関連痛として射精時に痛みを感じる場合があります。
- 精索静脈瘤: 精巣から心臓に戻る静脈の血液が逆流して鬱滞し、陰嚢内に静脈の拡張ができる病気です。通常は陰嚢の重い感じや痛みを伴いますが、まれに射精痛と関連する場合があると言われています。
- 心理的な要因: 不安、ストレス、性行為に対するトラウマなど、心理的な要因が射精時の痛みを引き起こしたり、痛みを悪化させたりすることがあります。痛み自体は身体的な原因によるものだとしても、心理状態が痛みの感じ方に影響を与えることは少なくありません。
- まれなケース: 精嚢や前立腺、尿道などにできた腫瘍が痛みの原因となることも非常にまれにあります。しかし、射精痛が主症状として現れることは少ないと考えられます。
これらの原因は、診察や検査によって特定される必要があります。
自己判断せず、医療機関で相談することが重要です。
射精時・射精後の痛みの症状
射精時の痛みの感じ方や、痛む部位、その他の症状は、原因によって異なります。
ご自身の症状を正確に把握することは、原因を特定し、適切な治療を受ける上で非常に役立ちます。
痛む部位別の症状(尿道、下腹部、付け根など)
痛む部位は、原因疾患を推測する上で重要な手がかりとなります。
痛む部位 | 考えられる主な原因 | 症状の特徴 |
---|---|---|
尿道 | 尿道炎(STI関連が多い) | 射精時だけでなく、排尿時にも痛むことが多い。かゆみや分泌物を伴うことがある。 |
陰茎の付け根、会陰部 | 前立腺炎(特に慢性前立腺炎) | 射精時だけでなく、座っている時や長時間同じ姿勢をとっている時にも痛みやすい。 |
睾丸(精巣) | 精巣上体炎、精巣炎 | 陰嚢の腫れや発熱を伴うことが多い。触ると強い痛みがある。鼠径部まで痛むこともある。 |
下腹部 | 前立腺炎、精嚢炎(まれ)、尿路結石 | 前立腺炎の場合は会陰部痛を伴うことが多い。尿路結石の場合は激しい痛みを伴うことが多い。 |
鼠径部(足の付け根) | 精巣上体炎、精索静脈瘤(まれ) | 睾丸の痛みに伴って現れることが多い。 |
これらの部位だけでなく、腰やお尻、太ももの内側などに痛みが放散することもあります。
痛みの部位が複数にわたる場合や、痛みが移動する場合もあります。
射精後の腹痛について
射精後に下腹部が痛むという症状を訴える方もいます。
これは、射精の際に精嚢や前立腺などが強く収縮することによる生理的な痛みである場合と、前立腺炎や精嚢炎など、炎症があることによって射精時の収縮が痛みを誘発する場合が考えられます。
- 生理的なもの: 射精は筋肉の収縮を伴うため、特に疲れているときや久々の射精の後に一時的に軽い腹痛や不快感を感じることはあります。
- 炎症によるもの: 前立腺炎や精嚢炎(精嚢の炎症)がある場合、射精による臓器の動きが炎症部位を刺激し、射精後もしばらく痛みが続くことがあります。この場合、射精痛と同時に排尿時の痛みや頻尿などを伴うことも多いです。
射精後の腹痛が毎回起こる、痛みが強い、他の症状を伴うといった場合は、医療機関で相談することをお勧めします。
痛みの種類(ツーン、ズキズキなど)
痛みの感じ方には個人差がありますが、痛みの種類も原因疾患を推測するヒントになることがあります。
- ツーン、ズキズキ、焼けるような痛み: 尿道炎など、尿道の粘膜の炎症による痛みに多い表現です。排尿痛と同様の痛みを感じることがあります。
- 重い感じ、鈍痛: 慢性前立腺炎や精索静脈瘤などで、臓器の炎症や鬱滞による痛みに多い表現です。
- ピリピリとした痛み: 神経痛や、炎症による神経刺激の可能性も考えられます。
- 激しい痛み: 急性前立腺炎や精巣上体炎など、強い炎症を伴う場合に起こりやすいです。尿路結石の場合は、射精に関わらず激しい痛みが起こることが多いですが、まれに射精で誘発されることもあります。
これらの痛みの感じ方もあくまで参考であり、同じ病気でも痛みの感じ方は人それぞれです。
重要なのは、ご自身の痛みのパターン(いつ、どこが、どのように痛むか、どのくらいの強さか、何をしているときに痛むかなど)を医師に伝えることです。
射精時の痛みで受診すべき目安
射精時の痛みは、一時的なものであれば様子を見ても良い場合もありますが、病気が隠れている可能性も高いため、自己判断せずに医療機関を受診することが推奨されます。
特に、以下のような場合は、早めに受診することを強くお勧めします。
どんな症状が出たら病院に行くべきか
- 痛みが数日以上続いている、あるいは悪化している: 一過性の痛みではなく、痛みが持続したり強くなったりする場合は、何らかの病気が原因である可能性が高いです。
- 痛みが強く、日常生活に支障が出ている: 痛みがつらくて性行為を避けたり、痛みのせいで気分が落ち込んだりする場合は、治療が必要です。
- 射精痛以外の症状を伴う:
- 発熱、悪寒
- 排尿時の痛み(排尿痛)
- 頻尿、強い尿意(尿意切迫感)
- 尿が出にくい、残尿感
- 尿道からの分泌物(膿や粘液)
- 血尿
- 陰嚢や精巣の腫れ、痛み
- 下腹部や会陰部の持続的な痛み
これらの症状は、前立腺炎、尿道炎、精巣上体炎、尿路結石など、治療が必要な病気の可能性を示唆します。
- 性感染症(STI)の可能性に心当たりがある: 不特定多数との性交渉があった、コンドームを使用しない性行為があった、パートナーが性感染症と診断されたなど、STIに感染した可能性がある場合は、射精痛がそのサインであることも考えられます。放置すると、ご自身の健康だけでなく、パートナーへの感染リスクも高まります。
- 痛みが繰り返される: 以前にも同様の射精痛を経験したことがある場合、慢性的な疾患(慢性前立腺炎など)の可能性も考えられます。
- 不安が大きい: 原因が分からず、不安で精神的に参ってしまう場合も、専門家に相談することで安心できる場合があります。
射精時の痛みは、性機能に関するデリケートな問題であるため、受診をためらってしまう方も多いかもしれません。
しかし、早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが、症状の改善や合併症の予防につながります。
勇気を出して一歩踏み出すことが大切です。
射精時の痛みは何科を受診すべき?
射精時の痛みの原因は、主に男性生殖器や尿路系の病気であるため、泌尿器科を受診するのが最も適切です。
泌尿器科医は、男性生殖器(前立腺、精嚢、精巣、精巣上体など)や尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に関する専門家です。
問診、触診(直腸診など)、尿検査、血液検査、超音波検査などの様々な検査を用いて、痛みの原因を詳しく調べることができます。
性感染症が原因として強く疑われる場合や、性感染症に関する相談も同時に行いたい場合は、性病科や性感染症専門クリニックも選択肢の一つです。
ただし、多くの泌尿器科でも性感染症の検査・治療は行っています。
もし、かかりつけの内科医などに相談しやすい場合は、まず相談してみるのも良いでしょう。
必要に応じて適切な専門医(泌尿器科など)を紹介してもらえるはずです。
射精時の痛みの対処法・治療法
射精時の痛みの対処法や治療法は、その原因によって大きく異なります。
原因疾患が特定できた場合は、医師の指示に従って適切な治療を行うことが最も重要です。
病院での射精痛の治療
病院での射精痛の治療は、原因疾患に対する根本的な治療が中心となります。
- 前立腺炎:
- 細菌性: 細菌の種類や感受性に応じた抗菌薬を使用します。急性の場合は点滴での投与が必要な場合もあります。通常、数週間から数ヶ月間、根気強く服用する必要があります。
- 非細菌性(慢性骨盤疼痛症候群): 抗菌薬の効果が期待できないため、症状を緩和するための治療が行われます。前立腺や尿道の緊張を和らげるα1ブロッカー、痛みを抑える鎮痛剤、炎症を抑える抗炎症剤などが使用されることがあります。症状に応じて、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることもあります。生活指導やストレッチ、骨盤底筋のリラクゼーションなども重要な治療の一部となります。
- 尿道炎・精巣上体炎(性感染症によるもの): 原因となっている病原体(クラミジア、淋菌など)に有効な抗菌薬を使用します。多くの場合、内服薬で治療可能ですが、淋病などでは注射薬が使われることもあります。パートナーも同時に検査・治療することが重要です。
生殖器感染症の診療については、生殖器感染症診療マニュアルなどが参考になります。 - 尿路結石: 結石の大きさや位置に応じて治療法が異なります。自然排出が期待できる場合は、水分摂取を増やし、鎮痛剤で痛みをコントロールしながら経過観察します。大きな結石の場合は、体外衝撃波結石破砕術や、内視鏡を用いた結石除去術(経尿道的結石破砕術など)が行われます。
- その他の原因: 骨盤底筋の過緊張には理学療法や筋弛緩剤、神経痛には鎮痛剤や神経ブロック、精索静脈瘤には手術などが検討されることがあります。心理的な要因が強い場合は、カウンセリングや精神科医との連携も有効です。
重要なのは、医師の診断に基づいて、自己判断せずに指示された治療を継続することです。
途中で自己判断で治療を中断すると、症状が再発したり、慢性化したりするリスクがあります。
日常生活でできる射精痛への対処
原因疾患に対する治療と並行して、日常生活の中で痛みを和らげるためにできることもあります。
ただし、これらの対処法はあくまで補助的なものであり、根本原因の治療の代わりにはならないことに注意してください。
- 体を温める: 会陰部や下腹部を温めることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ痛みが軽減されることがあります。温かいお風呂にゆっくり浸かる、使い捨てカイロで温めるなどが有効です。(ただし、急性の炎症で熱感がある場合は、温めることで悪化する場合もあるため、医師に相談してください。)
- 骨盤底筋の緊張を和らげる: 長時間座りっぱなしを避ける、座るときはドーナツ型のクッションを使う、骨盤底筋のストレッチやリラクゼーションを行うなどが有効な場合があります。
- 刺激物の摂取を控える: カフェイン、アルコール、香辛料などの刺激物は、前立腺や膀胱を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。症状がある間はこれらの摂取を控えることを検討しましょう。
- 禁煙: 喫煙は血管を収縮させ、血行を悪化させます。また、炎症を助長する可能性も指摘されています。禁煙は、射精痛だけでなく全身の健康にも良い影響を与えます。
- ストレスを軽減する: ストレスは痛みを増悪させる要因となり得ます。適度な運動、十分な睡眠、趣味など、ご自身に合った方法でストレスを解消することを心がけましょう。
- 規則正しい生活: バランスの取れた食事、規則正しい生活は、体の免疫力を保ち、回復を促します。
- 適度な運動: 体全体の血行を良くし、ストレスを軽減する効果があります。ただし、会陰部を強く圧迫する自転車などは、症状がある間は避けた方が良い場合もあります。
射精後トイレに行くタイミングと感染症予防
「射精後にすぐトイレに行って排尿すると、感染症を予防できる」という話を耳にすることがあるかもしれません。
これは、排尿によって尿道を洗い流すことで、尿道内に存在する可能性のある細菌などを排出するという考えに基づいています。
確かに、排尿には尿道をきれいに保つ役割がありますが、射精後の排尿による性感染症(STI)の予防効果は限定的と考えられます。
特に、尿道よりも奥の前立腺や精嚢、精巣上体に感染が広がっている場合は、排尿だけでは病原体を洗い流すことはできません。
性感染症を予防するためには、コンドームを正しく使用することが最も効果的です。
また、複数のパートナーがいる場合や、パートナーが変わった場合などは、定期的に性感染症の検査を受けることが推奨されます。
性感染症対策については、厚生労働省の性感染症対策の基本指針も参照してください。
射精後に排尿すること自体は、特に問題ありません。
尿道の清潔を保つという意味では良い習慣かもしれませんが、それを過信して感染症対策を怠ることは避けるべきです。
まとめと射精痛に関する専門家への相談
射精時の痛みは、前立腺炎、尿道炎、精巣上体炎、性感染症、尿路結石など、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。
痛む部位や痛みの種類、その他の症状は、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。
多くの原因は、細菌感染や炎症といった治療可能な病気です。
しかし、放置すると慢性化したり、不妊などの合併症を引き起こしたりするリスクもあります。
また、性感染症の場合は、ご自身だけでなくパートナーの健康にも関わってきます。
射精時の痛みが続く場合や、他の症状を伴う場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診しましょう。
射精痛の診断・治療は、泌尿器科が専門です。
勇気を出して医師に相談することで、適切な診断と治療を受けることができ、症状の改善につながる可能性が高まります。
射精時の痛みは、恥ずかしいと感じたり、誰に相談すれば良いか分からなかったりするかもしれません。
しかし、これは多くの男性が経験しうる症状であり、専門医は日々多くの患者さんと向き合っています。
一人で悩まず、まずは専門家である泌尿器科医に相談してみてください。
早期受診、早期治療が、つらい射精痛を克服するための第一歩です。
【免責事項】
本記事は射精時の痛みに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。
症状がある場合は必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断・指導を受けてください。
本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。